夫婦関係に悩みはじめた当初、私はこう思っていました。
「私がもっと優しくすればいいのかも」
「夫の機嫌を損ねないように、上手に接する努力が足りないのかも」
そうやって、自分を責めてばかりいたんです。
ネットやSNSでは「愛され妻になる方法」や「夫婦円満の秘訣」といった情報が溢れていて、私もたくさん読みあさりました。
「夫を立てる」
「夫を褒める」
「夫の気持ちを理解する」
──そのすべてを、真面目に実践していたつもりでした。
でも、結果は真逆。
努力すればするほど、夫の態度はどんどん悪化していったんです。
そもそも「夫婦円満ノウハウ」ってどんなもの?
私が当時、夢中で読んでいた本や記事に共通して書かれていたのは、こんなことでした。
- 夫を褒めてあげましょう
- 夫を立ててあげましょう
- 男性は“認められる”ことで伸びる生き物です
- 相手の立場になって考えましょう
- 「ありがとう」「さすが!」など感謝と称賛を言葉にしましょう
こうしたノウハウは、一般的な男性に対しては確かに効果があります。
「認められると嬉しい」
「感謝されるともっと頑張ろうと思う」──
そういう素直な反応が返ってくるのなら、それは“対等な信頼関係”が築けている証拠です。
私も最初は、「褒める」「立てる」を実践することで、関係がよくなると信じていました。
それまでのギスギスした空気が、少しでも和らぐなら──そう思って、心をこめて伝えていたのです。
でも、モラハラ夫には、それが全く違う形で受け取られてしまっていたんです。
そして、歪んだ“ノウハウ”の受け取り方
私が言った「ありがとう」「助かったよ」の言葉は、夫にとっては「俺のほうが上だ」と確認する材料になっていきました。
私の気遣いや努力は、「もっと要求してもいい」というサインとして認識されたのです。
夫の態度は、褒めれば褒めるほどエスカレートしていきました。
私が「夫婦円満ノウハウ」を実践してみた結果…
当時、私は第二子を妊娠中で体調が不安定でした。
それまでほとんど家事に手を出さなかった夫が、ある日、お風呂掃除をしてくれたんです。
「わあ、ありがとう! 私がやるよりずっとキレイ!」
「やっぱり男の人は力があるからピカピカになるね!」
私は、心から感謝の気持ちを伝えました。
これがあの“円満ノウハウ”で言われていた「褒めて育てる」ってことなんだと思ったんです。
実際、夫もそれ以降は家事に協力的になりました。
その姿を見て、私は「やっぱり私が変われば、夫婦関係もよくなるんだ」と、希望を感じていたんです。
ところが──それは、長くは続きませんでした。
しばらくすると、夫の様子が徐々に変わっていきます。
たとえば、子どもがぐずっていて、「ありがとう」を言いそびれただけで、
「俺がこれだけやってやってるのに、お前は感謝もできんのか?」
その後も、夫の口調はだんだんと刺々しくなっていきます。
「お前が無能やから、俺が家事までやってやってるんやろ」
「外でも働いてる俺が、家でもこんなに動いてやってる。お前は一体何やってんの?」
「俺がどれだけできた夫か、お前は理解してない。もっと感謝しろよ」
これらは大げさに言ってるわけでも演出でもありません。
実際に、私が言われた言葉です。
「褒める」「立てる」「感謝を伝える」──それらはすべて“良い妻”になるために学んだことだったはず。
それを一生懸命やっていたのに、どうして夫の暴言がひどくなるの?
次第に私は、夫が家事を手伝うこと自体にストレスを感じるように。
なぜなら、その行動はすべて
「あとで私を責めるための材料」にされていたからです。
私のためでも家族のためでもなく、“俺がやってやった”という実績を作り、私をコントロールするための家事だったのです。

一般的な夫婦円満ノウハウはモラハラをエスカレートさせるワケ
一般的な夫は「共感と感謝」で関係を深める
一般的な男性は、妻の努力や思いやりに対して、自然と感謝の気持ちを抱き、自制する気持ちが自然と働くのです。
たとえば、どんなに帰りが遅くなっても、妻が疲れていても、夫を待って夕食を一緒に食べる。
この行動に対し、共感力のある男性なら「ありがとう。待っててくれたんだね」と優しさを返してくれるでしょう。
また、体調を気遣ったり、「無理しなくていいよ」と思いやりの言葉をかけるはずですよね。

モラハラ夫は好意を“支配の材料”として受け取る
ところが、モラハラ傾向の夫はその行動を「自分を優先するのは当然」と受け取ります。
感謝どころか、
「待っていて当然だ」
「子どもがいても関係ない」
「待ってくれた? 当然だろ? それが妻の仕事だ」
と考えるのです。
そこに、罪悪感や配慮といった感情は存在しません。
むしろその行動を、“支配を正当化する証拠”のように扱うのです。
妻の努力は“当然の義務”と見なされ、さらなる要求につながります。
モラハラ夫は妻の気持ちに寄り添えない
さらに、モラハラ夫は共感力が低いため、相手の気持ちに寄り添うことが極端に苦手です。
「相手のために我慢する」
「相手の負担を考えて自分の要求を抑える」
こうした当たり前のブレーキが働かず、要求がどんどんエスカレートしていくのです。
そのため、あなたが“良かれと思って”行った努力が、かえって「もっとやって当然」というメッセージとして受け取られてしまいます。
それが、モラハラを加速させてしまう理由なのです。

結論!モラハラ夫に一般的な夫婦円満ノウハウは通用しない
ノウハウは「信頼関係」がある相手にこそ有効
世の中にある夫婦円満ノウハウの多くは、
「夫を褒めて育てる」
「夫の気持ちを尊重する」
「夫を立てる」
といった、相手に歩み寄ることで関係を円滑にする方法が中心です。
これは、相互理解や共感が通じる関係においては非常に有効です。
しかし、モラハラ傾向のある夫に対しては、真逆の結果を生むことがあります。
モラハラ夫は“上下”でしか関係を捉えない
しかし、モラハラ夫はこうした好意を“服従の証拠”として解釈します。
- 褒める → 「自分が上だとお前が認めたな」
- 立てる → 「当然だ。もっと崇めろ」
- 気持ちをわかろうとする → 「お前が合わせるのが当然だ」
このように、あなたの“善意の行動”がすべて、“支配を許す行為”にすり替えられてしまうのです。
だからこそ、モラハラ気質の相手に対しては、一般的なノウハウをむやみに実践しないことが極めて重要です。
まずは「通用しない相手がいる」という事実を受け止めること。
そして、今の関係性に本当に“信頼”と“対等性”があるのか、自分自身に問いかけてみてください。

まとめ
夫婦関係を良くしたいという思いで努力をしてきたはずなのに、気づけば自分ばかりが我慢し、傷ついていた。
そんなあなたの違和感、それは決して間違っていません。
「褒めてもうまくいかない」
「優しくすればするほど態度が悪くなる」
「感謝を伝えているのに責められる」
もしそんな状況に心当たりがあるなら──
それは、相手がモラハラ気質を持っている可能性があります。
一般的な夫婦円満ノウハウが“逆効果”になるケースもある。
これは、もっと多くの人に知られるべき大切な事実です。
あなたがすべきことは、これ以上自分を責めることではありません。
モラハラという現実に目を向け、適切な対処に切り替えることです。
そして何より、自分自身の心と人生を守る選択をしてほしい──
その一歩を踏み出す勇気が、未来を変えていくのです。
