「夫婦なんだから、ちゃんと話し合えば分かり合えるはずだよ」
「きちんと話せば、きっと相手も理解してくれるよ」
こんな言葉、あなたも一度は言われたことがあるのではないでしょうか?
もちろん、普通の夫婦関係においては、話し合いはとても大切です。
互いの意見をぶつけ合い、すり合わせていく過程が、信頼を深める土台になります。
私も何度も言われました。
でも、そう言われるたびに心の中ではこう叫んでいました。
「モラハラ夫は、話し合いができる相手じゃないんだよ!!!!」
そう、モラハラ夫とは話し合いが成立しません。
その最大の理由は──彼らの言動にはまったく一貫性がななく、「支配」が目的だからです。
話合いができないモラハラ夫
「さっきと言ってることが真逆じゃない?」
「昨日はOKだったのに、今日は何でダメなの?」
そんな風に、発言や態度がコロコロ変わる。
もはや、その瞬間その瞬間で別人のよう。
そんな経験ありませんか?
これはあなたの被害妄想ではありません。
ある日のリアルな会話
私の夫も、今さっき言ってたことと全然違うこと言ってる!ということはしょっちゅうでした。
実際によくあった私と夫の会話です。

AとB、どっちがいいかな?



俺はどっちでもええで。好きなほう選んだらええやん
──この時点で私は、「優しい」「尊重してくれてる」と思ってしまうんです。
でも実際に「Aがいいかな」と答えると──



マジで?Aはないやろ〜。絶対Bやって(笑)



そう?
Aだっていいと思うけど



Aなんかありえへんやろ~
B一択やで!
A選ぶやつなんかいるんか(笑)



・・・・
だったらBにしよか
──数分後──



じゃBでお願いしてくるね



「は?勝手に決めんなよ。誰がBって言ったん?



え?Aでいいの?
さっきB一択って言ってたやん?



いつそんなん言ったよ!
勝手に話し作んなよ!
お前ほんま怖いわ



・・・・・・・・
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!
お前が怖いわーーーーー!!!!)
(心の叫び)
リアル会話です。(笑)
こんな会話が、一度や二度ではなく、日常的に何度も繰り返されるんです。
本当に、冗談抜きで頭がおかしくなりそうでした。
選ばせてからの全否定
私の夫は必ず一度は
「お前の好きな方にしたらいい」
「お前が決めたらいいよ」
という、優しくて寛大な夫のポーズをとってきますが、
私が決めたことに、必ず必ず絶対に!!いちゃもんをつけてきます。
「好きにしていいっていうなら文句言わないでよ」というと、
「いやまさかそんなん選ぶと思わへんやん(笑)」
と笑顔でバカにしてきます。
そして最終的には、さっき散々バカにしていたAを、自らの意思で選んでいるという矛盾に気づいていない・・・
何が正しくて、何が間違っているのかわからなくなる
私は一時、本気で悩みました。
「もしかして私の記憶がおかしいの?」
「私の理解力が低すぎるのかな?」
「私の方が非常識なのかも…」
本気で、自分の頭を疑うようになっていきました。
でも、同じような体験をしている人の話を聞いて、ようやく気づいたんです。
「ああ、私だけじゃない。これは私のせいじゃない」
モラハラの心理的メカニズムを知る
モラハラ夫の矛盾した言動や、理不尽な否定の裏には、明確な心理的構造があります。
それを理解すると、
「なぜ話が通じないのか」
「なぜいつも否定されるのか」
という疑問が、すっと腑に落ちてきます。
① ガスライティング:現実感を奪う心理操作
ガスライティングとは、相手の言動・感情・記憶を否定し続けることで、自分の現実感覚に自信が持てなくなるよう仕向ける心理操作です。
モラハラ夫は、こんなセリフをよく使います。
「そんなこと言ってないよ。お前の思い込みやろ」
「は?何を勝手に話作ってんの?」
「それ、昨日はOKした?覚えてへんわ。証拠あんの?」
こうした否定を繰り返されると、妻はやがてこう思うようになります。
「私の方が記憶違いだったのかも」
「私の考え方がおかしいのかな」
「あれ?私が変なの?」
何を話しても「間違っている」「そんな話はしていない」と否定されると、自分の感じたことすら信用できなくなります。
この状態が続くと、自分の感覚を信じられなくなり、思考停止状態になっていきます。
そして、常に相手の顔色をうかがい、自分の感情や希望を押し殺すようになります。


②否定的支配:選ばせてから潰す
モラハラ夫は、自分が家庭の支配者でいたいという強烈な欲求を持っています。
そのため、妻が自分の考えや希望を表明したとたんに、それを真っ向から否定します。
これは、「その内容が気に入らないから」ではなく、「妻が言ったから」という理由だけで反対していることが非常に多いのです。
たとえば──
- 妻が「Aがいい」と言えば、「Bが正解やろ」と言う
- 妻が「Bにしてみたら?」と言えば、「は?Aに決まってるやろ」と返す
つまり、選択肢の内容はどうでもよく、「妻の意見を認めないこと」自体が目的なんです。
こうした言動には、次のような心理が働いています。
- 「妻が判断すること自体が気に入らない」
- 「自分より先に何かを決められるのが許せない」
- 「主導権は常に俺にあるべきだ」
その結果、どんなに冷静に提案しても必ず否定され、話し合いが成立しなくなるのです。


③ 投影:自分の不安や怒りを妻にぶつける
モラハラ夫は、自分の中の不安・劣等感・怒りを処理するのが非常に苦手です。
しかしその感情を抱えたままではいられないため、その感情を他人(主に妻)に押しつけて発散することがあります。
これが「投影」と呼ばれる心理現象です。
たとえば──
- 自分がイライラしている → 「お前がイライラさせるんや!」と怒鳴る
- 自分がミスした → 「なんでお前がちゃんと確認しないんや!」と責任転嫁する
- 自分が不安 → 「お前、俺のこと信用してないやろ」と詰め寄る
つまり、自分の未処理な感情を、あたかも「お前がそうさせた」という形で妻にぶつけるのです。
この投影によって、妻は「自分が悪いのかも」と感じるようになり、ますます言い返せなくなってしまいます。
④ 二重拘束(ダブルバインド):どう転んでも否定される状況
モラハラ夫は、自分にとって都合が良いように、矛盾したメッセージを同時に出すことがあります。
たとえば
- 「好きにしていいよ」と言う → 実際に選ぶと「なんでそんなん選ぶねん?」と怒る
- 「怒ってない」と言いながら → 不機嫌な顔で怒鳴る
- 「もっとちゃんと相談しろ」と言う → 相談すると「自分で決めろや」と怒る
これが心理学でいう「ダブルバインド(二重拘束)」です。
つまり、「どう動いても否定される」状態を作り出し、相手に判断させず、常に支配的な立場に自分を置くという操作です。
妻が何をしても正解にならないこの構造は、精神的に非常に消耗します。
そして最後には、「もう何も決められない」「何も言えない」という状態に追い込まれるのです。


⑤ 感情のインフレとご褒美のループ(いわゆる“飴と鞭”)
モラハラ夫は、一見優しく見えるときもあります。
それが、逆に被害者を混乱させる原因になっています。
たとえば、激しい暴言を浴びせた後に、突然優しい言葉や態度を見せてくることがあります。
「さっきはごめんな」
「体調悪いなら休んでて。俺が洗い物やっておくから」
「次の休みは君の行きたいところに遊びに行こう」
その一瞬の“優しさ”を見て、妻は「やっぱり話せばわかる人なんだ」と思ってしまうのです。
しかしこれは、モラハラ特有の操作的な優しさである場合が多く、次にまた怒りが爆発したときの衝撃を、より大きくしてしまいます。
このように
怒鳴る → 優しくする → また怒鳴る
という「感情のジェットコースター」を繰り返されると、妻は常に緊張状態に置かれ、「怒らせないように」「機嫌を取らなきゃ」と相手中心の思考に陥っていきます。


モラハラ夫の行動に共通する「根本的な目的」
ここまで見てきたように、モラハラの心理的メカニズムは複雑ですが、どの手法にも共通している“目的”があります。
それは
「相手(妻)を支配し、主導権を絶対に渡さないこと」
です。
そのために、言葉を使って記憶をねじ曲げ、否定を繰り返し、感情を揺さぶり、「自分の考えが正しい」「相手は常に間違っている」という状態を作り出そうとするのです。


この心理構造を知ることが、第一歩
被害に遭っているときは、自分がモラハラを受けているということに気づきにくいものです。
なぜなら、ガスライティングや二重拘束によって、自分の「判断力」や「感情のセンサー」すら麻痺させられているからです。
でも、こうした心理的操作の構造を知ることで、
「これは私のせいじゃない」
「この異常さは、私のせいではなく相手の支配欲なんだ」
と、冷静に距離をとることができるようになります。


モラハラ夫との話し合いは成立しない理由
そもそも話し合いとは、
- お互いが自分の想いや希望を伝える
- 意見が違えば、すり合わせる
- 両者が納得できる落としどころを模索する
これが、本来の「話し合い」のあるべき姿です。
夫婦関係においても、当然このプロセスが理想とされています。
ですが──モラハラ夫との間においては、この常識が通用しません。
モラハラ夫には“意志”がない?
通常、自分の意志が「Bが良い。Aはいらない」と明確であれば、たとえその意見を口にしたことがなくても、その考え方は変わらないはずです。
しかし、モラハラ夫の場合、気分や状況に応じて意見が揺れ動くことが多く。
これはつまり、彼には自分の意思が全く存在しないということです。
モラハラ夫の言動は、彼の気分だけで変わってしまいます。
最初に「Aが良い」と彼が言ったとしても、数分後には「Bしかない」と真剣に思い直しているのです。
私が「Aが良い」と主張すると、 モラ夫は
(お前の思い通りにはさせたくない!)
「Aなんてありえない!絶対にBだ!」
と、まるで私がAを選ぶことがバカみたいな態度を示しました。
しかし、その後、舌の根も乾かぬうちに、 「それじゃBにするね」と最終確認を行ったところ、 モラ夫は
(なんでお前が決めているんだ!お前の言うことは絶対に認めない!)
「何が何でもAだ!」
と反発します。


モラハラ夫の目的は支配
モラハラ夫にとっては、結局のところAでもBでも構わないのです。
なぜなら、彼の目的はただひとつ。
「妻を支配したい」
意見が変わろうと、話が矛盾しようと、それでかまわない。
ゴールは「相手を自分の思い通りに動かすこと」だからです。


モラハラ夫の“話し合い”は、「支配の手段」にすぎない
モラハラ夫の本音はこうです。
「話し合い=自分の支配が確立する場でなければ意味がない」
つまり、表面的には「話し合いをしよう」と言っても、その実態は次のようなものになります。
- 妻が意見を言えば否定される
- 妻の希望は「甘え」「わがまま」と切り捨てられる
- 話の内容ではなく、「誰が主導権を握っているか」が重要
そしてその支配欲の強さゆえに、内容(AかBか)には実は何の興味もないのです。
まとめ:モラハラ夫にとって、話し合いは「妻をねじ伏せる手段」
- 話し合いとは「相互理解」のプロセスではなく、「支配の舞台」
- 夫の関心は「内容」ではなく「主導権を握ること」
- だから、AでもBでもどちらでもよく、否定のためなら真逆のことも平気で言う
- 一貫性がないのは“支配欲”が理由。意志がないわけではない
彼の目的が「支配」である限り、こちらがいくら冷静に、誠実に、理論的に話しても──
それはすべて無駄に終わります。
「話し合いで解決しよう」と思っても、その“話すこと”自体がすでに相手の土俵に乗せられている状態なのです。

