離婚における財産分与というと、多くの人が預貯金や住宅、車、家財道具などを思い浮かべると思います。
しかし、意外と見落とされがちなのが「生命保険」です。
実は、生命保険の契約内容によっては財産分与の対象になる場合があり、これを知らずに離婚を進めてしまうと大きな損をしてしまう可能性があります。
この記事では、2025年時点の最新情報をもとに、どんな生命保険が財産分与の対象になるのか、どのように分与すれば損をしないのかをわかりやすく解説します。
生命保険も財産分与の対象になるの?
結論から言えば、一定の条件を満たす生命保険は財産分与の対象になります。
ポイントは、「今現在、その保険に経済的価値があるかどうか」ということ。
財産分与の判断基準は、「婚姻期間中に形成された共同財産であるか」と「実際に価値をもつ資産であるか」です。
したがって、生命保険の中でも解約返戻金が発生するタイプの保険契約は、「資産」とみなされるため分与対象になります。
たとえば以下のようなケースです。
例)終身保険に10年間加入し、返戻金が120万円ある場合 → 夫婦で2分の1の60万円ずつに分ける
反対に、掛け捨て型の保険のように返戻金が発生しない保険については、たとえ婚姻中に支払っていても財産分与の対象にはなりません。
ポイントは「解約返戻金の有無」
財産分与の判断基準は、現在の時点で経済的価値があるかどうかです。
生命保険も例外ではなく、「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」が発生するタイプであれば、その金額が財産として評価されます。
財産分与の対象になる生命保険と対象外になる保険の違い
生命保険がすべて財産分与の対象になるわけではありません。
ここでは、どのような保険が対象になるのか、明確に見ていきましょう。
財産分与の対象になる生命保険
対象となるのは、解約時に一定の返戻金がある「貯蓄型」の保険です。
このタイプの保険は、保険料の一部が貯蓄として積み立てられ、途中で解約するとお金が戻ってくる仕組みになっています。
たとえば、以下のような保険が該当します。
- 終身保険
- 養老保険
- 学資保険(貯蓄型)
- 積立型医療保険・がん保険
- 個人年金保険
これらの保険は、契約年数や支払額に応じて返戻金の額が増えるため、離婚時のタイミングによっては数十万円~数百万円単位の資産となることもあります。
とくに注意が必要なのは、契約者が夫、被保険者が夫、受取人が妻や子どもというケースです。
このような場合、返戻金が発生する限りは財産分与の対象となります。
財産分与の対象にならない生命保険
一方で、「掛け捨て型」と呼ばれる保険は、貯蓄性がなく、解約返戻金がないため財産分与の対象にはなりません。
婚姻期間中に保険料を支払っていたとしても、経済的価値がないと判断されるからです。
主な例は以下のとおりです。
- 定期保険(死亡保障型の掛け捨て)
- 掛け捨て型の医療保険・がん保険
- 住宅ローンに付帯する団体信用生命保険(団信)など
また、結婚前に加入していた生命保険も、その契約や支払いが婚姻期間外に行われていた分は原則として対象外です。
ただし、婚姻期間中(結婚してから離婚もしくは別居するまでの期間)に支払われた保険料に該当する分だけ、部分的に分与の対象となるケースもあります。
生命保険を財産分与する方法|損をしないための選択肢
では、実際に生命保険を財産分与する場合、どのような方法があるのでしょうか?
ここでは代表的な3つの方法をご紹介し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
① 保険を解約して解約返戻金を分ける
もっともわかりやすく簡単な方法が、保険を解約して、発生した解約返戻金を2人で分ける方法です。
この方法のメリットは、現金でスムーズに清算できる点です。
保険会社に解約の手続きを依頼すれば、返戻金額がはっきりとわかります。
しかしながら、この方法にはいくつかの注意点があります。
- 契約途中で解約すると、返戻金が大幅に目減りする場合がある
- 離婚後に再び保険に加入しようとした際、健康状態や年齢で加入が制限されることも
- 加入できたとしても、保険料が以前より割高になる可能性が高い
特に2025年現在、保険会社の健康審査はより厳格になっており、糖尿病・高血圧・がんなどの既往歴がある人は再加入が難しい傾向にあります。
② 保険は継続し、解約返戻金相当額を他の財産と調整する
「保険を解約すると損をしそうだ」「保障は残しておきたい」という場合は、保険契約をそのまま継続した上で、解約返戻金相当額を別の財産で調整する方法があります。
たとえば、解約返戻金が100万円ある場合は、その金額をもとに預金や不動産の分与割合を調整するというやり方です。
また、契約者の名義を変更して保険を継続するケースもあります。
たとえば、契約者が夫であった保険契約を妻に名義変更し、今後の保険料は妻が支払い、子どもを受取人にすることで家族への保障を維持できます。
将来新しく保険に加入するとき、健康状態や病歴によっては再加入できなかったり、年齢が上がっている分料金が上がるなど、リスクを避けつつ、離婚後も必要な保障を残せるという点で非常に実用的です。
③ 養育費の保障として生命保険を活用する
近年増えているのが、「生命保険を養育費の支払い保障として活用する方法」です。
これは、離婚後に子どもを育てる親が、元配偶者に万が一のことがあった場合にも、養育費に相当する保険金が支払われるように設計するという方法です。
この場合、保険の受取人は子ども、契約者は支払義務のある親(多くは元夫)となります。
例:養育費の総額が600万円と見積もられる → 死亡保険金額を600万円に設定
このようにしておけば、万が一、支払い義務者が病気や事故で死亡したとしても、子どもが受け取るべき養育費が保障されるのです。
保険の名義変更・確認は「離婚前」に済ませるのが鉄則!
生命保険の名義変更や契約内容の変更については、離婚前に必ず手続きしておくことが重要です。
婚後は、元配偶者と連絡がとれなかったり、協力を得られなかったりするケースが多く、名義変更や書類の取得ができなくなるリスクが高まります。
保険会社に問い合わせれば、以下の内容を確認できます。
- 現在の契約者名・受取人名
- 解約返戻金の額と見込み額
- 名義変更の可否と必要書類
- 契約内容の変更手続きにかかる期間と費用
すべての保険が名義変更可能とは限らないため、事前に保険会社に問い合わせることが不可欠です。
「知らなかった」「後から気づいた」では済まされません。
離婚に向けた準備の一環として、必ず保険内容の確認・見直しを行いましょう。
ちなみに私は離婚調停の場で、保険関係の名義変更などを済ませました!(正確には夫が)
第三者が入ってくれることで、夫と直接話し合うことなく安心して手続きができますよ。
まとめ|生命保険の財産分与は「見逃し厳禁」
生命保険は、住宅や預金ほど目に見える資産ではないため、つい見落としがちですが、場合によっては非常に大きな財産になることもあります。
とくに長年積み立ててきた終身保険や学資保険、個人年金保険などは、返戻金が高額になるケースもあります。
離婚後の生活設計や子どもの将来の教育費などにも大きく関わる可能性があるため、生命保険の財産価値をきちんと理解し、損をしないよう準備しておくことが大切です。
選択肢としては、解約による分割、契約継続による返戻金評価、養育費保障としての活用などがありますが、どの方法が最もふさわしいかは、夫婦の状況や今後の生活設計に応じて慎重に判断する必要があります。
